愛媛大学電子物性デバイス工学講座半導体工学分野
白方研究室
Photoluminescence
Photoluminescence
半導体の評価法としては、あまりにも有名ですので説明不要です。
実験上の注意
励起光が分光器に入らないように細心の注意を払う必要があります。 それでも多少は励起光が入りますので、分光器の入り口の前にロングパスフィルターを挿入して励起光をカットします。
特に、発光と励起光のエネルギーが近い場合は特に迷光に注意しなければなりません。ダブルモノクロメータをつかうとかなり迷光には効果があります。
高次光に注意しましょう。フィルタの2倍以上の波長のスキャンには注意しましょう。
PLの効果的な測定法
信号や目的に応じて効果的な測定手段を選ぶこと。 プロと称するならば牛刀にならないように。 ブロードな発光バンドを光分解能用の焦点距離の長い高価な分光器で測定することは「極めておろかなこと」であることを自覚しましょう。 これでもって、暗いからフォトンカウンターを使ったなどというのは「愚の骨頂」です。 通常の半導体の測定であれば、焦点距離50cm程度でf値が4から6程度の分光器の使用が最も効率的な測定につながります。 焦点距離50cmの分光器でしっかりした測定ができなければ、1mの分光器は牛刀に過ぎません。 確かに、1mの分光器とフォトンカウンターがあれば、少々光軸がずれていてもまともなPLスペクトルはとれます(同じ要領では50cmの分光器ではうそ八百のデータしかとれません)、しかしかかった時間(と時間当たりのレーザ管の使用料)を考えてみればその効率の悪さはきわめつけです。
最近の学生には牛刀が適していることがわかってきました。 時間がかかって効率が悪くてもデータに信頼性はあるようです。 牛刀しているかぎり決してプロにはなれないことを自覚しましょう。 年をとったら牛刀 の方が気楽な気もしてきました。 考える必要ないですからね。
信号が弱いという前に、強く光る試料を作りましょう。 フォトンカウンターでしか取れないような弱いルミネッセンスでは論文になるようなデータにはなりません。 従って通常のPLにフォトンカウンターは不要です。
温度変化の効果的な測定法
なるべく短時間で測定すること(時間積分とはちがいます、心がけの問題です)。 時間をかければかけるほどデータの質は悪くなります。 光軸もずれますね(特に最近の冷凍機では)。 徹夜してPLの温度変化のデータをとったというと、たぶん殆ど強度はあてにならないでしょう。 労多くして利上がらず。 低温(10K)から室温まで10Kきざみで3時間の測定時間が最も効率的と考えます。 1スキャン5分以内にしましょう。 温度ステップは20Kでも10Kでもあまり時間は替わりません。20Kステップでは温度が安定するのに時間がかかります 。10Kステップではその間にもう1スキャンできます。
S/Nに関して
高価な高性能ロックインアンプを使う前に、自分の使っているシステムを再点検して下さい。 殆どの場合、安価な中古ロックインで間に合うはずです。 いまだに秋葉原のジャンク屋で2万円で買ってきたメータのガラスの割れたNFのロックイン(LA-572)を使っています。 東京出張の帰りに飛行機に手荷物として持ち込みました。 殆どこれで間に合うようです。 これ以上の微弱光ですとフォトンカウンターでしょう。
高価な高性能ロックインアンプを使う為の条件は
* 光電子増倍管の出力電圧が低いこと1-10マイクロボルト以下。
* 光電子増倍管が十分冷却されて、これ以上暗電流が下げられないこと。
* システムにこれ以上改善の余地の無いこと。
ロックインアンプに関しては、米国PAR社のものがあまりにも有名です。アナログロックインの芸術品であるHR8や124Aはシンプルなデザインと、優れた安定性、S/Nで他を寄せ付けないものがありました。PAR(EG&G)社はPerlin Elmer社に買収されたのでしょうか。
でしょう。 S/Nはシステム全体のS/N低下の要因の積み重ねで決まります。 従って一カ所を良くしたところでS/Nは殆ど改善されません。 シールドは大丈夫でしょうか。 光電子増倍管のハウジングでは磁気シールドや電磁シールドは良くても静電シールドがなってないものを良く見かけます。アース線一本でS/Nは飛躍的に改善されます。 分光器の波長送りの振動がノイズの原因となることも多くあります。 冷凍機の振動も結構きいてきます。
S/Nを上げる前に、光学系は確かでしょうか。 分光器のfと集光系のfを合わせない人を見かけますがこれも「愚の骨頂」としか言いようがありません。 一度分光器の上蓋をはずしてしっかり凹面鏡を見てみましょう。 ルミネッセンスが凹面鏡の中に入っていますか、もしはみ出していればこれが全てロスになっています。 信号が取れるか取れないかの瀬戸際には結構きいてきます。
分光器に関して
分光器は、目的に応じて選ぶ必要があります。
*どれぐらい高い分解能の測定をするのか、
*波長精度、波長再現性はどれぐらい必要か、
*迷光の除去が必要か、
でほぼ決まります。あとは、明るさと予算との相談となります。
他との共用を考えて一台で済ませる場合50cm程度の焦点距離でfが4-6のしっかりしたものが良いでしょう。
焦点距離が1mを越える大型分光器は、それなりの目的と腕が無ければ使いこなせませんし、実験室の温度管理も重要になってきます。しかし、しっかりした1mの分光器を性能の限界まで使いこなせれば、申し分ありません。
ちなみに、私が使っているSPEX社(現Jyobin Ybon社)1000M分光器(1m)は優れ者で、波長精度と波長再現性は近紫外-1500nmで0.02nm以下であり、波長精度に関しては申し分ありません。引っ越しで移設したあとでも調整無しでこの精度をキープしていました。これより優れた波長精度の分光器は殆ど無いと思います。
Photoluminescence Excitation
受光側分光器の波長を固定した上で、励起光波長を変化させ、励起光波長に対して発光強度をプロットしたスペクトルです。 注目している発光が、どの波長で励起されているかを調べることができます。 一例として、基底準位の発光をモニターしながら励起準位のエネルギーを決定するこがあげられます。
実験上の注意 発光と励起光のエネルギーが近い場合は特に迷光に注意しなければなりません。 受光用分光器にはダブルモノクロメータを、励起光源には色素レーザやチタンサファイアレーザなどの波長可変レーザあるいはダブルモノクロメータを用いた単色光源を用いることが信頼性の高いデータの取るための秘訣です。
Time-Resolved Photoluminescence
最近はポピュラーになりました。 寿命測定です。
良く考えて下さい。 はやりですか?。
励起光源
1. パルスレーザによる励起
私は好きではないのですが、N2レーザやエキシマレーザなどのパルスレーザが多く用いられています。 光波形が、インパルス状ですので、検出器の出力波形はシステムのインパルス応答になります。 寿命の長い系を短いパルスで励起するときは注意が必要で、うまく励起できないことがあります。このときは次の(2.)を参考にして下さい。 パルスレーザは、ガスの放電を利用するものが多く、放電時のパルスノイズに注意する必要があります。 特に検出系のシールドは注意して下さい。
2. CWレーザと変調器の組み合わせによるもの
使い安いものとしてCWレーザと音響光学変調器(AOモジュレータ)の組み合わせがあります。
それほど高速を必要としない場合は非常に便利な励起光源です。 また、パルスレーザと違って、励起光源のノイズが無いことがメリットです。 AOモジュレータの入力にTTLレベルのパルス波形を加えれば出力光が矩形波に変調できます。 従って、励起を十分定常状態にしたあとでぱちんと光を切ることができます。解析は非常に楽ですね。 AO変調器は、昔はCOHERENT社製しかなく高価でした。 最近は国内ではHOYAが低価格で発売しています。 可視ですと20万円程度です。 また、昔は可視のAO変調器しか無く、ArやKrレーザしか変調できませんでしたが、最近、紫外のAO変調器が発売されました。 He-Cd 325nmの変調が可能になりました。 しかも回折効率80%程度とれますので30-50mWのHe-Cdレーザですと十分実用になります。
受光
1. ナノ秒-マイクロ秒-ミリ秒s
昔は、BOX-CAR積分器を使っていました。 今では積算機能付きのデジタルストレージオシロスコープでしょうか。 可視ではゲート付きのフォトンカウンターも使えます。
2. ピコ秒
ストリークカメラですね。 金持ちしか使えません。